汚屋敷生まれ、汚部屋育ち。

汚部屋脱却を目指し、むらさきが奮闘するブログ。

歳をとったと感じたおはなし

小さい頃、花が好きじゃなかった。

…というほどでもなかったかもしれないけど、嫌いな花が多かった。

実家は庭が広くて、その庭を飾り立てるためのガーデニングには興味があったから親や祖母にたくさん指図しながら庭を作っていた自覚はあった。 外から見たら花が好きな子供だったかもしれない。

でも、実は嫌いな花が多いからこそ、自分の家の庭に植えるものにこだわりがでてきたのかもしれない。 好きなものだけで庭を埋めたかった。 嫌いな花はいらない。

私が好きだったのは、丸いプランターで寄せ植えを作ること。 カラフルだけどなんとなく色合いがいい感じで、高低差があるから手前の花から奥の花まできちんと見えて、バランスも取れている。 時にはスタンドを使ってプランター自体を浮かせて、アイビーかなにかツタっぽいものを手前に植えて、プランターから垂れ下がる形にするのは特に好きだった。

一方で、好きじゃない花は、チューリップ、ツツジ、紫陽花。 他にもあった気がするけど、パッと思い浮かばない。

チューリップは、今考えるとなんだかよく分からないけど、なんとなく子供っぽいイメージを抱いていた覚えがある。 幼稚園の名札のせい? あとはあのすぼまった形も派手さに欠けると感じていた。 チューリップを絵に描くのも好きじゃなくて、私の描く絵に登場する花は、黄色い丸から5枚の花びらが出てるやつか、バラ。 バラの絵は下手だったからあんまり描いてないかもしれない。 …でもとにかく、子供のくせに「子供っぽい」という理由でチューリップが嫌いだった。

ツツジは、あの絶妙に蛍光っぽいピンク色が好きじゃなかった記憶がある。 ピンク自体は好きだったはずだけど、蛍光色は何色でも嫌だった。 今となってはツツジには白もあるし、ピンクと紫の間みたいな落ち着いた色もあるのを知っているけど、小さい頃は蛍光みたいなピンクのイメージしか頭になかった。 あと、子供だからこそ顔の高さがツツジと近くて、近くに寄るとうっすら香る、花なのに緑っぽいにおいが嫌だった。

そして紫陽花は、花というより葉っぱの進化系という認識が強かった。 房で考えれば丸くて、小さい花がたくさんついているんだけど、その小さい花一つひとつ単位で考えてしまっていたから、平らで可愛げのない花だと感じていた。 花の咲く時期のせいもあって、雨が降りがちで天気がどんよりしている中に青や紫の花が咲いていても、明るいイメージが持てなかった。 あとは、あの大きな葉に私の苦手なナメクジやカタツムリが付いているイメージも強く、近付くのさえも嫌だった。

そんな嫌いだった花たちでも、大人になってみると…というかつい最近なぜかよく目につくし、「綺麗だな〜」と思いながら眺めている自分に気付いた。

今と昔ではもちろん身長が伸びた分目線の高さ・見る角度が物理的に違うし、いろんなものを見てくる中で、1つの種類の花でも幼い頃は知らなかった色に出会ってイメージが変わったこともあると思う。 でも1番変わってしまったのは、私が普段見ている景色なんじゃないだろうか。

小さい頃は、たくさん絵を描いていたし、友達だって描いていたから、幼稚園や小学校でいろんな人が描いたいろんな色の使われた絵を眺めていたし、自分たちの使うものや着ているものの色も、とてもカラフルで明るい色使いのものが多かったんだと思う。 そんな中で、私が好きじゃなかった花たちは、形や色、イメージ、におい…どこか華やかさに欠けているように見えていたのではないか。

一方で、絵を描く仕事や趣味を持っていなければいろんな色を使って絵を描くこともないし、大人になればなるほど「無難」「悪目立ちしない」「落ち着き」を求めてしまって、服や身の回りの品はどんどん明るい色が減っていく。 久しぶりにピンクの服を買ったな〜と思っても、それは「くすみピンク」であって、色鉛筆やクレヨンの「ピンク」とは違う。 会社のオフィス什器は白だったりベージュだったりして、文具類もシンプルで大抵落ち着いた色合いで、単色かせいぜい2色くらいのもの。 パソコンは黒か銀色だし、そこに映し出されるものもベース背景は白か黒、目立たせたいところに必要最低限の色が登場するくらい。 オフィスにいる人だって、大多数が黒や紺のものを着ているし、明るい色のものを着ている人はそう多くない。

そんな大人になった私の世界では、街中で見かけるチューリップやツツジ、紫陽花は一隅を照らすような明るさを放っているように見えた。 通りがかりについつい目がいってしまうし、これらの花が道端に咲いている時期は、近所のスーパーに行くのさえも楽しみになる。

嫌いな種類の花たちが、大人になって「楽しみ」になるとは思っていなかった。 子供の頃は大人たちが「綺麗ね〜」とそれらを眺めていたのが理解できなかったが、今なら分かる。

花を眺めると気持ちも明るくなるし、部屋に花を飾りたいという気持ちも出てくる。

花を飾るには汚部屋を脱出しなければならないが…。